《まわる矢車草》―ピアノのための―
☆2007年作曲。未発表。

《CODE FOR FLOWERS》 for solo Piano
1. Baby's Breath 2. Tuberose
初演プログラムノートより~
本日が初演となるこの作品は、シンプルで奇を衒(てら)う仕掛けもない、ただひそやかな命のしるし=「花の名」をタイトルとする二つの曲から成っています。その花言葉が象徴する世界の扉はピアノのトリルによって開かれ、聴く人をつかの間の幻想へといざなっていきます。
第一曲「Baby's Breath」(かすみ草)は、傍らにいる友に語りかけるように始まり、ゆるやかに歌い、やがて柔らかなダンスへと変わっていきます。さらに歌は絡み合い昂揚しクライマックスを迎えたあと、始めの歌を優しく回想しながら次の曲に向かいます。
第二曲「Tuberose」(月下香)ではまず、ほの暗い音のにじみのなかに淡い旋律が浮かび上がります。やがてそれは軽やかな和声の連なりへと変容し、そこに色鮮やかな花粉のごとくにアルペッジョが舞い散ります。そして、九つのコードが響くとすぐに高音の短いトレモロが鳴り、曲は穏やかに消えていきます。
いずみの岸辺に咲く花二輪から、慎ましくもかぐわしい響きが薫り立つよう、願っています。
【上演記録】
2006年11月26日 神戸女学院秋季公開講座2006 『ダンスを感じる音楽がきこえます』 (西宮市 神戸女学院講堂)
お話 石黒 晶
ピアノ 小幡麻紀
コンサート初演 2006年11月28日 『第6回コンセール・シュプレーム演奏会』 (大阪市 いずみホール)
ピアノ 小幡麻紀
再演 2007年7月29日 『神戸女学院大学2007年度オープンキャンパス 音楽学科の模擬講義 ミニ・コンサート』(ジョージ・オルチン記念音楽館1階 合奏室)
ピアノ 宮階郁子
〃 2007年9月11日 『コロラド大学ボールダー校ファカルティ・リサイタル・シリーズ 音楽は海を越えて~日本とアメリカの音楽交流』』 (米国コロラド州コロラド大学ボールダー校 グルジン音楽ホール)
海外初演
ピアノ 茂木むつみ
〃 2008年2月24日 茨木市制施行60周年記念『第9回クリエイティブコンサート』(茨木市市民総合センター クリエイトセンター・センターホール)
ピアノ 宮階郁子

独奏マンドリンのための《 遥かな古都へ》
1. 楔形文字 2. 秋風さやかに… (10')
【上演記録】
初演 2006年10月8日 『第2回大阪国際マンドリンコンペティション&フェスティバル』 (大阪市 ザ・フェニックスホール)
マンドリン 横田 綾子

《 Grassland Ballad 》- for Piano and Orchestra -
1. Gallopping Horses 2. A Tombstone
☆2006年作曲、未発表。

弦楽三重奏曲《草原のラプソディ》
1. 嬉遊曲 2. 夜曲 3. 止まない舞踏
初演プログラムノートより~
ストリング・トリオのために書いた《草原のラプソディ》は、これが初演となります。ここで私がイメージしている“草原”とは、アジア大陸の樹のない平原です。乾いた広々とした空間を背景に、三つの弦楽器が互いに響きあい、そこに生き生きとした、喜ばしげな雰囲気が生まれてほしい―そんなことを願いながら書きました。曲は三つの部分に分かれ、それぞれタイトルをつけていますが、全体は続けて演奏されます。
【上演記録】
2003年3月7日 『第6回コンセール・シュプレーム演奏会』 (名古屋電気文化会館ザ・コンサートホール)
ヴァイオリン 石橋EDUARD和彦 ヴィオラ 臼木麻弥
チェロ 黒川正三

《Monody - Canticles》 ― for Solo Flute ―
1. Beginning - Dance 2. Small Shrine 3. Step Song - Calm...
☆1988年初演の《モノディー(冥想歌) 》の改作新稿。未発表。

《Piano Quintet》― for 2Violins, Viola, Violoncello, and Piano ―
I. 東雲の… In Dawn
II. 揚琴歌 Yangqin Song
III. 重々しく~叙事詩風に Pesante - Ballata
☆2000年作曲、未発表。

《絃歌三章》
Gen-ka ― for Violoncello solo ―
I. 太原へ To Taiyuan
II. モリン・フール Morin-huur
III. オスティナート Ostinato
プログラムノートより~
この曲は1996年秋に脱稿ののち三年を経て、このたび初演の機会を得ることができました。
三つの楽章に分かれていますが、いずれにも特殊奏法の類はない、きわめてオーソドックスな書法によっています。それは、チェロ四弦の豊かなレゾナンスの中に響く素朴な音型や旋律、それらが醸し出すだろう”アジア的”な私の原風景を、この曲では聴きたかったからです。
無伴奏チェロという向心力の強い媒体が、私の歌を聴き手に確かに運んでくれると願いながら、書きました。
この曲を、感謝とともに Jerzy WOLOCHOWICZ に献呈いたします。
【上演記録】
初演 1999年10月31日『神戸国際現代音楽祭'99 第三夜』(ポートアイランド ジーベックホール)
Vlc. Jerzy WOLOCHOWICZ
再演 2004年12月17日『まど・みちおと響きあう仲間たち』(名古屋市名東文化小劇場)
Vlc. 黒川 正三
2005年1月11日 神戸女学院大学音楽学部音楽学科専門研究会
『つきのひかり』―東京フィル 黒川正三、本学非常勤講師らによるコンサート―(神戸女学院大学オルチン館)
Vlc. 黒川 正三
2006年7月1日 2006年大東文化大学オープンカレッジ春期講座『無伴奏チェロの世界』
(板橋区 大東文化大学板橋キャンパス)
Vlc. 黒川 正三
2007年5月20日 久が原クロスクラブコンサート第10回記念特別企画『無伴奏チェロの世界』
(大田区久が原 クロスクラブ)
Vlc. 黒川 正三

オンドマルトノ&チェンバロ五重奏曲《田園詩》
Pastoral Poem ― for Ondes Martenot, String Trio, and Harpsichord ―
1. 光り映す大気 Shimmering Air
2. 影なす樹々 Shadowy Trees
3. 宙を踏む踊り A Dance upon the Air
4. エピローグ・祈り Epilogue - Prayer
初演プログラムノートより~
この曲は、1993年に馬場明美氏の委嘱を受け、本日の演奏会のために書いたものです。「コンセール・シュプレーム」の、馬場氏を囲む原田節氏と黒川正三氏の輪に、高平純氏と石橋EDUARDO和彦氏が今回加わって下さり、この五重奏曲を作曲できたことを幸運に思います。
オンド・マルトノとチェンバロは、その歴史は異なるものの、どちらも西洋の薫り濃く感じられる楽器です。ユニークな編成に取り組むにあたり、私には未知であったこの二つの楽器が、まずは豊かに響いてくれるよう願い、楽案を探りつつ書き進めました。
長年の約束をようやく果たした今、作曲を待って下さった馬場明美氏に、感謝と深い敬意をもってこの曲を献呈いたします。
「影なす樹々」について~
オンド・マルトノ&チェンバロ五重奏曲《田園詩》は、1998年の『コンセール・シュプレーム第5回演奏会』のために委嘱され、同演奏会で初演された。しかしその後曲には大きな改作がなされ、2003年3月の『同第6回演奏会』では、オンド・マルトノ:ハラダタカシ、チェンバロ:馬場明美、ヴァイオリン:石橋Eduardo和彦、ヴィオラ:臼木麻弥、チェロ:黒川正三の各氏により、この「影なす樹々」を第2楽章に持つ改訂版が初演された。
この特異な楽器編成で作曲者が聴きたかったのは、光と大気を思わせるストリング・トリオの和弦、オンド・マルトノの虹色の歌、チェンバロの祈りのフレーズ。そしてそれらが混じりあい醸し出される、あたたかい柔らかな響きであった。
第2楽章「影なす樹々」は、オンドの深々とした陰影を湛える独奏に始まる。そこに現われた奥行きある空間に、さらに弦とチェンバロが加わってくる。演奏は全曲を通して集中度の高いものであったが、特にこの楽章でのオンディスト、ハラダ氏のすばらしい独奏は忘れ難い。
なおこの改訂版上演のため、神戸女学院大学研究所より体育芸術活動助成を受けたことを付記する。
【上演記録】
初演 1998年9月12日『Concert Supreme第5回コンサート』(名古屋市電気文化会館)
Ondes M. 原田節 Vln. 石橋EDUARDO和彦
Vla. 高平純 Vlc. 黒川正三 Cemb. 馬場明美
改作初演 2003年3月7日『Concert Supreme第6回コンサート』(名古屋市電気文化会館)
Ondes M. 原田節 Vln. 石橋EDUARDO和彦 Vla. 臼木麻弥 Vlc. 黒川正三 Cemb. 馬場明美

《太原へ》
To Taiyuan ― for Solo Violoncello ―
1. モデラート/2. アレグロ
☆1992年作曲 二楽章の無伴奏チェロ独奏曲。
初演プログラムノートより~
無伴奏のチェロのための作曲を考えはじめたのは、昨年暮れのことだった。
弦楽器の中でも殊の外深みのある艶やかな音色を持つこの楽器によって、素朴な楽想を素朴なままにおおらかに歌いたいという思いが作曲中いつもあったが、確かな量感をもつ音楽をチェロ1本で支えながら、それをひとつの作品にまで至らしめる難しさを思うこともまた度々だった。しかし今回は初演奏者となる花崎薫氏のご協力をいただき、曲を書きすすめながらそのつど試奏していただき、また先を続けるという大変幸運な仕事の経過となった。 曲は三つの楽章から成る。
「太原へ」というタイトルは、作曲の間、楽想をくりかえし聴きながらそれに想い重なっていた、私がまだ訪れたことのない大陸の地平の漠たる心風景に因んだ。
【上演記録】
初演 1992年11月28日 『石黒晶室内楽作品展』 (和歌山市民会館小ホール)
Vlc. 花崎 薫

《ヘミオラの道》
The Path of Hemiola ― for Solo Piano ―
プログラムノートより~
この曲の着想は約10年前にさかのぼる大学院最期の頃である。当時レッスンに曲のデッサンを持参しつつ短期間での完成を目論見ながらも脱稿に至らず、その後作曲の中断をくり返しながら1991年10月にようやく書き上げ、同年11月の和歌山『同声会コンサート』にて玉置博子氏により初演された。
タイトルの”ヘミオラ”とは3+2拍子のメーター(韻律)を表すギリシャ語で、全1楽章で構成されるこの曲を一貫する連打のモチーフに因んで名づけた。冒頭より固執するヘミオラのモチーフに、より広がりのある世界への予感があり、それが何度も放棄を考えたこの曲を書き続ける動機となった。
【上演記録】
初演 1991年11月2日 『和歌山同声会コンサート』 (和歌山紀の国会館)
Pf. 玉置博子
再演 1991年12月1日 『出口美智子音楽生活30周年記念演奏会』 (和歌山市民会館小ホール)
Pf. 玉置博子
〃 1992年11月28日 『石黒晶室内楽作品展』 (和歌山市民会館小ホール)
Pf. 玉置博子

《モノディー(冥想歌)》
"Monody" ― for flute solo ―
☆1987年作曲 全一楽章の無伴奏フルート独奏曲。
初演プログラムノートより~
モノディーとは、単旋律による音楽の意で、特定の時代の様式をさす場合もあるが、ここでは無伴奏の独奏器楽曲という程の意味である。このような音楽においては、その持続が演奏者のフレーズ感と息づかいに大きくゆだねられるように思う。
一本の笛に託した私のひそやかな歌が、奏者の自在な呼吸により豊かな流れとなることを願いながら、この曲を書いた。
【上演記録】
初演 1988年4月8日 『ゾリステン'85 第8回演奏会』 (東京文化会館小ホール)
Fl. 中川昌巳